DeFi関連主要銘柄の詳細分析と将来性【Lido Finance (LDO)編】

DeFi関連主要銘柄の詳細分析と将来性【Lido Finance (LDO)編】

主要DeFi関連銘柄の分析
本章では、DeFi市場における有力候補として選定された主要銘柄について、そのプロジェクト概要、主要機能、トークンエコノミクス、セキュリティ対策、ロードマップ、および関連するリスク要因を詳細に分析します。

Lido Finance (LDO)のプロジェクト概要とLiquid Stakingの役割
Lido Financeは、分散型リキッドステーキングプロトコルであり、ユーザーがEthereum (ETH) などの資産をロックアップすることなくステーキング報酬を獲得できる革新的なソリューションを提供しています。
従来のステーキングでは、資産が一定期間ロックアップされ、その間流動性が失われるという課題がありましたが、Lidoはこの問題を解決します。
ユーザーはETHをLidoに預け入れると、その代わりにstETH(staked ETH)というトークンを1:1で受け取ります。
このstETHは、預け入れたETHとその累積報酬を表し、流動性を維持したまま他のDeFiプロトコルで運用し、追加の利益を得ることが可能になります。

EthereumがProof of Work (PoW) からProof of Stake (PoS) へと移行した「The Merge」以降 、Lidoのようなリキッドステーキングサービスは、PoSネットワークのセキュリティと分散化に貢献しつつ、ユーザーに資本効率の高いステーキング機会を提供しています。
LidoはDeFi市場で最も急成長しているリキッドステーキングデリバティブプロトコルの一つであり、そのTVL(Total Value Locked)は圧倒的な規模を誇ります。
2025年6月17日時点で、LidoのTVLは約237.85億ドルに達し、その大部分はEthereumチェーンに由来しています。
リキッドステーキング市場全体のTVLが約494.72億ドルである中で、Lidoは約48.08%の市場支配率を占めており、この分野のリーダーとしての地位を確立しています。

■stETHの機能とDeFiエコシステムでの活用

stETHは、LidoプロトコルにETHを預け入れた際に発行されるトークンであり、ステーキングされたETHとその累積報酬を反映します。
stETHは、ETHと同様に譲渡、取引、そして様々なDeFiアプリケーションでの利用が可能です。
この流動性こそが、Lidoの提供する主要な価値提案です。

stETHはDeFiエコシステム内で多岐にわたる用途で活用されています。
例えば、Aaveのようなレンディングプロトコルにおいて融資の担保として利用されたり、レバレッジステーキングを通じてETHへのエクスポージャーを増幅させたりするのに用いられます。
また、多様な報酬を得るためのDeFiオプションや、リステーキングプロトコルにおいて追加の報酬を獲得するための担保としても機能します。
stETHは、そのセキュリティ、深い流動性、および競争力のある報酬率により、100以上のプラットフォームと統合されており、Ethereumのリキッドステーキングトークンとして主要な存在となっています。

■LDOトークンエコノミクスとガバナンス

LDOはLido DAO(分散型自律組織)のガバナンストークンであり、Lidoプロトコルの運営と将来の方向性を決定する上で中心的な役割を担います。
LDOトークン保有者は、プロトコルのパラメータ(手数料率、ノードオペレーターの割り当て、オラクル選択など)の変更提案に対して投票する権利を持ちます。
投票権はLDOの保有量に比例するため、保有量が多いほど意思決定への影響力が高まります。

LDOの総供給量は10億LDOに固定されており、約8.92億LDOが流通しています。
Lido DAOは、プロトコルが生成するサービス手数料を蓄積し、これを開発、研究、流動性インセンティブ、プロトコルのアップグレードといった活動に資金として供給します。
この収益モデルは、プロトコルの持続的な成長を支援する経済的枠組みを構築しています。

LDOトークンはLidoプロトコルのガバナンスに不可欠であり、その価値はプロトコルの成功と密接に結びついています。
Lido DAOが手数料を開発資金に充てる構造は、プロトコルの持続的成長を支援します。
しかし、LDO保有量に比例する投票権は、大口保有者による意思決定への影響力を高める可能性があり、これは真の分散化を達成するための課題となり得ます。
Lidoはノードオペレーターの分散化を進めていますが 、ガバナンスにおける権力集中は常に監視されるべき点です。
LDOの価値は、stETHの採用拡大とLidoプロトコルの手数料収入に直接的に連動すると考えられます。
ガバナンスの健全性が、長期的なプロトコル成長とLDO価値の安定に寄与するでしょう。

■セキュリティ対策と監査状況

Lidoは、DeFiプロトコルが直面するスマートコントラクトの脆弱性やハッキングリスクに対処するため、セキュリティに多大な投資を行っています。
Lidoはセキュリティ対策に400万ドル以上を投じており、これには複数のセキュリティ企業による厳格な監査、バグバウンティプログラムの実施、および専門家によるレビューが含まれます。
Certora、Statemind、Sigma Prime、ChainSecurity、MixBytes、Ackee Blockchain、Hexens、Oxorなど、多数の著名なセキュリティ企業がLidoのプロトコルを監査しています。

Lidoのプロトコルはオープンソースであり、これにより世界中の開発者による継続的なピアレビューと改善が可能となっています。
例えば、Oracle V5アップデートのセキュリティレビューでは、Composable Securityとの共同作業により、2つの中程度の脆弱性が特定され、迅速かつ完全に修正されました。
これは、Lidoがセキュリティを継続的に重視し、発見された問題を即座に解決する体制を持っていることを示しています。

さらに、Lidoはノードオペレーターの分散化にも積極的に取り組んでいます。
700以上のノードオペレーターが世界中でバリデーターを運用しており、これにより地理的およびクライアントの多様性が促進されています。
この分散化は、単一障害点のリスクを軽減し、ネットワーク全体のレジリエンスを高める上で極めて重要です。

Lidoのセキュリティへの継続的な投資と多角的なアプローチは、DeFiプロトコルが直面する進化する脅威(例: フラッシュローン攻撃、オラクル操作 )に対する業界のベストプラクティスを示しています。
この強固なセキュリティ体制は、ユーザーの信頼を獲得し、大規模な機関投資家の採用を促進する上で不可欠な要素となります。

■ロードマップと将来性

Lidoのロードマップは、リキッドステーキングソリューションの強化、エコシステムの拡大、およびコミュニティ主導のガバナンス決定に焦点を当てています。
Lidoは、EthereumのPectraアップグレード(EIP-7251によるバリデーター統合とEIP-7002による実行レイヤーからの引き出し)と密接に連携しています。

将来的な計画として、LidoはOptimismやArbitrumといった主要なLayer2ソリューションへの拡張を検討しており、これによりEthereumのスケーラビリティ向上トレンドに対応し、より広範なユーザーベースへのリーチを目指しています。
Lido V3およびstVaultsは、より大きなMAX_EBバリデーターをサポートするように設計されており、stVaultsのローンチは2025年Q2-Q3に予定されています。
stVaultsの導入は、ステーキング戦略のカスタマイズ性を高め、機関投資家にとってより魅力的なサービスとなる可能性があります。
既存モジュールへの統合は2025年後半から2026年Q1に開始される見込みです。

Lidoのロードマップは、Ethereumのロードマップの進捗と、その技術的変化にLidoがどれだけ迅速かつ効果的に適応できるかに大きく依存します。
特に、L2エコシステムとの統合は、流動性の断片化リスクを軽減し、ユーザーエクスペリエンスを向上させる上で重要です。
これは、Lidoが市場リーダーシップを維持するための戦略的動きと解釈できます。
Lidoの将来性は、Ethereumの進化との同期と、それに伴う技術的課題への対応能力にかかっています。

■リスク要因(stETHのデペッグ、スラッシングリスク)

Lido Financeは、その革新性にもかかわらず、いくつかの固有のリスクに直面しています。

stETHのデペッグリスクは、リキッドステーキングプロトコルに固有の重要な課題です。
stETHはETHと1:1でペッグされることを目指していますが、市場の混乱時には一時的にペッグが外れる(デペッグする)可能性があります。
2022年5月のTerraブロックチェーンのクラッシュは、広範な市場の信用不安を引き起こし、stETHの一時的なデペッグとそれに続く連鎖的な清算を招いた事例として知られています。
特に、レバレッジをかけた運用は、デペッグ時の連鎖的な清算リスクを増幅させます。
機関投資家は、stETH/ETH比率の継続的な監視、最大許容割引限度の設定、ヘッジ戦略(例: オプション戦略やネイティブETHの保有)、流動性管理、およびシナリオベースの緊急時対応計画を通じて、このリスクを管理しています。
Lidoの成功は、これらの流動性リスクを効果的に管理し、市場の信頼を維持できるかどうかにかかっています。

スラッシングリスクは、PoS(Proof of Stake)の性質上避けられないリスクです。
バリデーターであるノードオペレーターが不適切な行動(例: オフラインになる、不正行為を行う)を行った場合、ステーキングされたETHの一部が「スラッシュ」(没収)される可能性があります。
Lidoは、ノードオペレーターの分散化を進めることで、単一のノードオペレーターの障害がシステム全体に与える影響を軽減しています。
また、Lidoはステーキング報酬の0.5%を保険基金に充当しており 、これによりスラッシングが発生した場合のユーザーの損失を最小限に抑えるためのバッファを提供しています。
これらの対策は、ユーザーの損失を軽減するための重要なメカニズムですが、リスクを完全に排除するものではありません。

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