今後急拡大が予想されるHBM市場の概要と有望銘柄
HBM(High Bandwidth Memory)は、高い帯域幅を持つDRAMの一種で、複数のDRAMチップを垂直に積層し、シリコン貫通電極(TSV: Through-Silicon Via)で接続することで、従来のDRAMに比べて圧倒的なデータ転送速度と電力効率を実現します。
■HBM市場の全般
HBM市場は、AI(人工知能)、機械学習、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、データセンター、自動運転車などの需要が急増していることを背景に、現在急速な成長を遂げています。
■市場規模と成長予測
HBM市場は、2024年に約25億ドル~30億ドル規模と推定されており、2030年までには92億ドル~1045億ドル(CAGR 24.2%~68.0%)に達すると予測されています。
この予測の幅は調査機関によって異なりますが、いずれも大幅な成長を見込んでいます。
特にAIブームがHBM市場を牽引しており、2035年には販売台数が15倍に増加するとの見通しもあります。
■市場を牽引する要因
高性能計算の需要増加
データセンターやスーパーコンピュータにおける膨大なデータ処理能力の要求が高まっています。
AIおよび機械学習の成長:生成AIのような大規模なAIモデルの学習・推論には、大量のデータを高速に処理するHBMが不可欠です。
エネルギー効率の向上:HBMは従来のDRAMに比べてエネルギー効率が高く、電力消費を大幅に削減できるため、環境負荷低減の観点からも注目されています。
技術革新
HBM技術の進歩(例:HBM3eなど)と製造コストの低減により、普及がさらに進むと予想されます。
新たな応用分野の拡大:AI、VR、自動運転車、IoTデバイスなど、さまざまな分野でのHBMの採用が期待されています。
■課題
限られた生産能力:HBMの製造工程は複雑で高度な技術と精度を要するため、生産できるユニット数が限られています。
これが供給不足や価格上昇を引き起こす可能性があります。
導入コスト:小規模な企業やスタートアップにとっては、HBMの導入コストが大きな負担となることがあります。
■地域別の動向
北米がHPC用途の成長により市場をリードしており、約40%のシェアを占めると予想されています。
アジア太平洋地域も約30%のシェアを持ち、特に中国と日本が主導しています。
■有望銘柄
HBM市場で有望視される銘柄は、主にHBMを製造するメーカーと、HBM製造に必要な半導体製造装置や検査装置を提供する企業に分けられます。
◆HBMメーカー
SK Hynix (韓国)
HBM市場においてトップシェア(50%以上)を誇るリーディングカンパニーです。
NVIDIAなど大手GPU顧客との取引実績が豊富で、HBM3eなどの最先端技術でも優位に立っています。
Samsung Electronics (韓国)
SK Hynixに続くHBM大手メーカーです。
DRAM市場全体ではトップですが、HBMにおいてはSK Hynixを追撃している状況です。
Micron Technology (米国):HBM市場では出遅れていましたが、HBM3eの量産に成功し、NVIDIAのH200への搭載が認証されるなど、急速に存在感を高めています。
今後のHBM売上高の急拡大が期待されています。
◆HBM関連の半導体製造装置・検査装置メーカー(日本企業中心)
HBMは積層構造のため、従来の半導体製造に加えて、新たな製造・検査工程が必要となります。
これに関連する技術を持つ企業が注目されます。
アドバンテスト (6857)
半導体テスター(検査装置)で世界トップクラスの企業。特にDRAM向けで高いシェアを持ち、NVIDIAのGPU向けにも実績があります。
HBMの性能検査に不可欠な存在です。
日本マイクロニクス (6871)
半導体検査器具のプローブカードで世界トップクラスの競争力を持つ企業。
メモリ向けで特に強く、HBMの検査でも重要な役割を担います。
東京エレクトロン (8035)
半導体製造装置で世界有数の企業。
特に、HBMの製造工程で重要なボンダー(半導体チップを接合する装置)の需要が増加しています。
ディスコ (6146)
半導体の切断、研削、研磨装置で世界首位。
HBMの製造において、チップを積層するために必要なTSV(シリコン貫通電極)技術に関連する研削・切断装置の需要が増加しています。
TOWA (6315)
封止や切断加工など半導体後工程用の製造装置大手。
HBM向けには、積層されたチップの成形や狭ギャップ間への樹脂充填に対応する同社のコンプレッション装置が採用されており、最先端HBMの生産に貢献しています。
レーザーテック (6920)
半導体マスク欠陥検査装置で世界的に強い企業。
HBMの製造プロセスにおける品質管理に貢献します。
これらの企業は、HBM市場の成長から直接的または間接的に恩恵を受けることが期待されています。
投資を検討する際は、各企業の業績や今後の見通し、技術動向などを詳しく調査することをお勧めします。